アメリカ進出

日系企業の米国事業の実情

アメリカでは圧倒的にコロナワクチンの摂取が進み、労働主要人口では集団免疫が確立し始めている。人口約3億3千万人の米国では完全摂取率が人口の40%を超えた。65歳以上は約60%以上。労働人口(15歳から64歳前後)の摂取率も同様に60%以上を誇る。主要都市、年収が高い地域では一般的に言われる集団免疫(人口の3分の2程度)に到達していると言われている。既に大半の州が経済正常化となりはじめ、ニューヨーク、カリフォルニア州では、6月中には経済の正常化宣言を打ち出している。

コロナの影響は鮮明ではあるが、海外でも地域・国の選定、商品、販路などを強みに持っている会社やそのデータ、経験値、人材は、このようなパンデミックで、事業の運気を変える大きなきっかけを持つ。経営者、拠点の担当者は、その機運を活用できるか?気付くことができるか?動けるか?は重要で社運ともなる

就労事情:
カリフォルニア州の主要企業は6月中旬の州の規制緩和予定日を境に、大半が事務所への通勤を予定している。コロナ以前の率に完全に戻すまでには、今暫く時間を要すると言う企業と、元には戻さないと言う企業に分かれる。管理部門や営業は、自宅・リモートの条件を緩和。管理職は大半が出社になるとの傾向が伺える。問題は、企業訪問、商談、下見、検証等々、実際に商談に欠かせない機会はどうなっているのかである。
徐々に開放はされているが、ワクチン摂取は絶対条件で、その上”信頼のできる先、常連取引”は優先されていると言う。日本からの出張者、日系企業は、現在の日本国の事情を背景に敬遠されている傾向が伺える。米国長期在住者で、ワクチン摂取者は別格である。となるとやはりリモートでの営業、プレゼン等は引き続き欠かせない。語学力/商談の粋力が問われる産業常識が続く。

往来:
米国疾病予防管理センター(CDC)は、5月24日、日本への渡航に関する注意レベルを4段階中最高の [レベル4”:(新型コロナウイルスへの感染リスクが)非常に高い(Very High)] 、に引き上げ、米国務省も同日、日本への渡航勧告レベルを4段階中最高の [レベル4”:渡航を中止せよ(Do not travel)]、に引き上げたが、これを受けて全米の報道ネットワークが日本への渡航、オリンピックの事情を、大々的に取り上げ始めた。法的な強制力は無いものの、主企業の規制がアジア主要国へ広がる事が予測される。
日本がオリンピックを決行し、世界はその状況を読み、悪化すれば年内は渡航を控える企業が増す。日本国自身の安全性が、世界に伝えられれば、日本企業との商流も歓迎されると噂される。
日本から直接機械サンプルを受け取る事を控える企業もいる。今はこのような事態を踏まえて、日米の往来は避け、米国内で確りワクチン摂取を終え、安全に米国取引先と会える機会を作る事が優先である。当たり前だが、米国はワクチン摂取率が高い国との往来を緩和している。商流にも直接繋がる事態である。

商談の鍵:
コロナ禍で様々な商談の機会に直面する。また日本人は、 ”情” が商談に大きく関わると痛感する。同じ空気を吸わず、文化や互いの生い立ちもわからず、数ヶ月のプロジェクトをリモートで折衝する事は非常に困難である。米国/海外から参加する他人種の企業幹部と世間話をして、商品/技術の商談中にウィットとユーモアを交えて空気を最高レベルで保持する事は至難の技である。
日本の技術は世界最高峰レベルである事は誰もが認める。しかしその経緯がスムーズでないと、 ”少々劣っていてもここでなくても良いか!?” となるケースを非常に多く見受けられる。米国製はよく壊れることが頻繁。日本の技術者の多くの方々の『よくこのようような部品で長年やって来たな』という発言はシリコンバレーの日系技術者の常用語と化している。逆に壊れるから商売がリピートされると言う考えが米国製造業のレッテルでもある。
世界的に通用する“ウィットとユーモア” を真面目で単一国民の日本人は持ち合えていないのではないだろうか。長年世界を見て・知る事でそれは生まれるものである。韓国のサムソン社は世界の現地で新入社員を雇用し、本社で研修は行わず、現地で直接学ばせ、現地の常識で現地に通用する製品/技術を開発させていると言う。今日本の海外事業部長、取締役、社長に大きな変化の判断を迫られる時期が来ているように思う。