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「アメリカの会社登記は1〜3週間で終わります」
この説明は間違いではない。実際、必要な情報と決断すべき事項が揃っていれば、登記自体は1〜3週間で完了する。
しかし、JCAが20年以上見てきた現実では、日本企業が「進出を決めてから事業を開始できるまで」の期間はまったく別の話だ。登記の速さと、事業立ち上げの速さを混同したまま計画を立てると、予算もスケジュールも狂う。この記事では、見積書や手続きガイドには表れにくい費用と期間の実態を率直に書く。
登記は1〜3週間。だが実際には2〜4ヶ月かかる
会社設立にかかる時間の大半は、手続きではなく「日本側の意思決定」が最も要する。
進出形態の選択、設立州の選択、資本金の額、役員構成。これらは登記書類の数行に過ぎないが、日本本社の稟議・採決を通すのに時間がかかる。これまでの経験上、これから詳細を固めていく場合は早くても半年程度の余裕を見ておく必要がある。少数オーナー企業で即決できる体制なら1〜2ヶ月で済むこともあり、この差はそのまま「決裁のスピード」の差だ。
さらに駐在員を赴任させる場合は、就労ビザの取得が加わる。事務所の賃貸、銀行口座の開設と資金の送金、事業計画書、各種ライセンス。ビザ申請に必要なこれらの準備に6ヶ月程度かかるため、総合的には9〜12ヶ月の準備期間を見るのが現実的だ。
| 段階 | 期間の目安 | 律速要因 |
| 進出形態・州・資本金の決定 | 1〜3ヶ月 | 日本本社の稟議・採決 |
| 登記手続き | 1〜3週間 | 書類が揃っていれば速い |
| EIN取得・銀行口座開設 | 2週間〜2ヶ月 | SSN/ITINの有無、銀行担当者 |
| ライセンス・保険・各種届出 | 1〜2ヶ月 | 業種により大きく変動 |
| 駐在員のビザ取得(必要な場合) | 9ヶ月〜1年 | 事業計画書の質、移民局の審査状況 |
設立費用の相場 — 現地法人3,000〜6,000ドル、支店3,000〜4,000ドル
費用の目安は明確だ。登記簿・定款・役員/株主議事録などの庶務を含め、現地法人(C-Corporation)の設立は平均3,000〜6,000ドル程度。庶務がほぼ簡略される支店登記は3,000〜4,000ドル程度となる。
注意すべきは、この金額に何が含まれているかだ。弁護士・事務所によっては、株式の発行や細やかな庶務を省くケースがある。「安い見積り」と「必要な作業を全部やった見積り」は別物であり、費用に含まれる項目を確認してから契約することが重要。
また、登記をしたからといって事業が即遂行できるわけではない。ビジネスライセンス、納税者番号取得、銀行口座開設、政府への届出、業種ごとの許認可、ライセンス取得、各種保険への加入が必要で、これらは上記の設立費用には含まれない。
見積書に表れない費用 、設立後に毎年かかるもの
JCAに相談に来られる企業の多くが見落としているのが、設立「後」の費用だ。代表的なものを挙げる。
| 項目 | 目安 | 備考 |
| 会社運営の実務(経理・庶務・申告) | 外注で年間4〜5万ドル程度 | 現地スタッフを雇用するなら年収6万ドル程度から |
| 州への年次報告(Statement of Information等) | 少額だが毎年必須 | 怠ると罰則・登記抹消リスク |
| 州の法人税・フランチャイズ税 | 州による(カリフォルニア州は最低800ドル/年) | 赤字でも発生する州がある |
| 各種保険(労災・賠償・役員等) | 事業内容による | 義務保険の未加入は罰則金 |
| 連邦への報告義務(BE-13、企業透明化法関連等) | 庶務コスト | 2025年1月1日以降に設立された企業は設立完了の通知後30日以内に報告をする義務がある。 |
毎年の運営維持費を含めて初年度予算を組むと、設立費用そのものは全体の一部でしかないことがわかる。昨今は管理業務のために駐在員を送らず、現地の専門家と組んで効率的に米国拠点を運営する日系企業が目立つ。「誰が会社を回すのか」を設立前に決めておくことが、結果的に最も費用を抑える。
JCAが見てきた「高くついた」ケース
費用が膨らむ典型は、手続きの失敗ではなく、手戻りだ。
例えば、『事業を行う州とは別の州で登記してしまった』ケース。
デラウェア州登記が有名だからという理由で登記したが、実際の事業はカリフォルニア州。結局カリフォルニア州での登記も必要になり、登記・税務申告・年次報告のすべてが二重になった。
上場やベンチャーキャピタルからの出資といった明確な理由がない限り、事業を行う州で登記すべきである。
もう一つは、『ビザを後回しにした』ケース。
会社登記は問題なく完了したものの、駐在員のビザが取得できず、事業を開始できない会社は実際に多い。登記と並行してビザ取得の計画を立て、却下された場合のリスクにも備えておく必要がある。
よくある事例:
・税金面で決めるー無税の州で登記を…
・まずはデラウェア州に登記…
・理想の土地名(NY,ロス)で決定する…など。
米国での会社設立は、設立後まで見据えてご相談ください
Japan Corporate Advisoryは、サンフランシスコ・シリコンバレーを拠点に、20年以上にわたり日本企業の米国進出を支援してきました。会社設立の手続きだけでなく、進出形態や州の選択、設立後の運営体制、駐在員のビザ取得まで、事業の立ち上げ全体を見据えたサポートを提供しています。
費用と期間の見通しを立てたい段階でのご相談も歓迎します。お気軽にお問い合わせください。

