OpenAI台頭によるシリコンバレーの勢力マップの変化

シリコンバレーのOpenAI社の創業者サム・アルトマン氏の解任と復帰。その背景は1990年代終わりから2000年代初頭のBluetooth社とインターネットが始まった時のブラウザ合戦とを融合した関係を思い起こさせる。

Bluetoothとインターネットの創成期

Bluetooth は1996年にインテル、エリクソン、ノキアという業界をリードする3企業が中心となって、異なる製品や業界間の接続やコラボレーションを実現するために近距離無線技術を標準化することが計画され、一社が独占で利権を持つのではなく、その普及と世の為を考えて運営策が考案された。そしてBluetoothは約3万5千社から成るBluetooth Special Interest Group (SIG) が権利を保有、管理しており、現在もBluetooth は利権争いの弊害が無く、我々は日常生活の中で便利な機能を利用することができる。

シリコンバレー・サンフランシスコエリアの動き

一方、インターネットを世界に拡散させたMicrosoft社の“Internet Explorer “は、Microsoft社が作ったものではなく、90年代にライセンス取得から始まった関係からMicrosoft社が買収をしてWindowsに組み込み、世の中に広まった。“Internet Explorer “の創業もシリコンバレー・サンフランシスコエリアであった。
2000年代に入るとGoogle社はChromeを、Apple社はSafariを自社開発しパソコンでインターネットを見る時代となり、その後はモバイル現象が台頭した。今では世界の6割のインターネットユーザーがGoogle Chromeを利用、4分の1がSafariを利用していると言われている。ブラウザ戦争は利権の紛争の結果現象である。(高速性でGoogle Chromeは圧倒的な勝利を収めている反面、訴訟は絶えない)
面白いのはその水面下で動いている人、人間の移り変わりである。城下町現象と同じことが北カリフォルニア、ベイエリアでこの30年起きている。90年代半ばに米国で圧倒的なポータルサイトとして創業したYAHOO社はInternet Explorerを推奨ブラウザーとして90年代後半から爆発的に普及する。だが、Google社が創業されてからは、”コンテンツを得る先がYAHOO(シリコンバレーのSanta Clara市)”という概念から “コンテンツにいかに早く辿り着けるか?” という時代に変わり、データの高速処理化でYAHOOは衰退、優秀なエンジニアはGoogleの城下町(シリコンバレーのMountain View市)に移り住んだ。その後モバイル現象が台頭すると、高速道路101号を渡ったMenlo Park 市にあるFacebookに城主を変えた。(地図茶色矢印)

地図上は大手IT企業、 地図左側は主なAIスタートアップ企業

求められる技術と人の流れ

このようなインターネット、ブラウザ、モバイル、BluetoothのIT戦国時代を生き抜いた世代は早50代、60代。現在の主要な労働力である20-30代は親世代を見て、AIに夢をかけている。OpenAIの技術・世界観、夢は人工的に情報を取得。何処でも誰でも、何時でも同様の情報を取得、分析をし、判断までをする。しかも、知能指数や勉強ができる有無と一切関連性がない時代を作ろうとしている。

今回、創業者の解任や復帰などで話題となったOpenAIは、サンフランシスコで非営利研究機関として2015年に設立。その後、運営継続の為に営利企業へ転身した経緯がある。OpenAIのCEOの人事劇はマイクロソフトの90年代の屈辱の証にも見える。スタートアップという常識が世に浸透した背景には、大企業は新規事業に適していないという暗黙のルールがある。AI技術は間違いなくその常識に従って産業基盤を確立するのであろう。既にGAFA+Microsoft+テスラがAI戦国に参戦している現象はその象徴である。
AI城下町の発展はその兵の質と数が決め手になるため、その兵集めに没頭しているが新産業は発展の形を変えて確立されるであろう。関わる人材の世代、時代が変化した今、AIの発展は過去のインターネットBluetoothの発展の違いのようにどちらの道を進んでいくのか。いずれにせよ今後の進展と発展が期待されることは間違いない。

アメリカでの事業進出、米国事業に関して、まずはお気軽にお問い合わせください。