アメリカでの株式上場

米国株式上場から上場後のIR、株主対策・株価の維持
〜日本の企業が米国で上場、株価は何故暴落するのか?〜

上場時の戦略・株主・出来高対策

アメリカ米国で株式を上場、特にナスダック/NASDAQ市場への上場の人気が年々増加している。東京証券取引所への上場の規制や年間上場件数枠がある中、市場をアメリカに向ける会社やグローバル戦略で世界最大の資本市場を狙って米国ナスダック/NASDAQ市場へ上場を検討する会社が目立つ。またそれと並行して昨今では上場を支援・サポートする様々なサービスや企業も増えている。

上場をすること自体は然るべき専門家、会計士、弁護士、監査会社が揃えば出来得るので、予算を賄えればさほど困難な事ではない。
重要なことは、”上場のカラー” と ”上場後の質” の管理である。
上場を目指す方、上場された方には上場の意義、目的の元を正して頂きたいと感じる。

なぜ、上場を目指すのか?

それによって ”上場のカラー”  が決まる。
上場を目指す日本の会社と言っても、Softbank、Rakuten、Amazon、Google、TESLA、UBERのようなグローバル企業なのか、あるいは日本国内での売上が5、10、20億円規模か、利益数億円以内でこの先も日本国内での事業計画の会社か、国外(欧米諸国)を目指すグロース会社か、など様々で、米国で上場する際に、株主の構成はどうであるべきか、誰が大株主で資本の主軸を支えるのか、浮動性はどうである事が理想なのか、株式の取引高、出来高額の理想はどうか、など様々な上場後の先行きを考えて上場を目指すことが全てとなる。

図1、昨今日本の会社がNASDAQ市場で上場を果たした会社の典型的な株価の推移。

上場を果たす事をVCや株主から強いられたり、創業者が事業の出口=イグジットを急ぐ事例。
また、IPOの時期を見誤っていたり、上場主幹事・引受けの手法を見誤ると上記の会社のように株価は暴落をし、創業時の株価維持どころか、誰も投資価値を生めず苦戦する会社が多く存在する。

米国の上場・資本市場から見ると、日本の会社は単純に3種に分かれる。
1、 国際優良会社 (ソニー、ソフトバンク、自動車メーカー、大手商社や大手メーカー)
2、 老舗系企業・製造業 (日本の強みや世界的に卓越価値を持った中堅会社)
3、 無名なスタートアップ・ベンチャー系会社
昨今では米国で上場している会社の殆どが3枠に該当する。米国ナスダックの上場規定に準じる為に、米国内で引き受け会社を選択。引き受け会社もどの会社をどのようなタイミングで売り替えするかのプロの投資家となるため、上場会社やアドバイザリーをする先は実績や経験も無い為に、彼らに力負けをするケースが殆どとなり、要は“儲け抜け”をされる。その結果、大損をするのは会社とその日本の株主となる。

上場後の質

質を見極めた理想の上場後ビジョン
誰もが抱く上場後の会社価値。上場時には初値が2−4割上がって値がつき、数週間でさらに上昇。
ただ、株価の上昇には利食い売り(利益確定売り)が必ず付随するので、急激な上昇には注意が必要だ。

下図2、理想な上場後の会社株価の推移

上場時、会社の売上が2−10億円。利益は1−2億円あるいは利益無しか赤字。上場時の調達資金を活用し、急成長して、2−5年で150−400億円の売上・利益30−40億円と、利益率も上昇。期待値で株価収益率PERも上がり、30−60倍ともなれば、(仮に)上場株価が$4の会社は$80-$150超えもありうることとなる。投資家からすれば10−20倍の投資リターン。ただし、その間支える株主が継続して保有している事が前提となる。安定株主へのIR(株主関係)を健全に保つ努力が欠かせない。折角米国の資本市場、NASDAQナスダック市場に上場しているのであるば、米国での投資家、年金運用ファンド会社、投資シンポジウム、アドバイザーや証券会社と組んだロードショーの開催を推奨する。

上場後の理想像

上場後、株価が大半の投資家出資時の株価を大幅に下回り、経費のみが掛かり続けて疲弊する会社が多い。その後の策も編み出せず、行き詰まっている会社は上場会社を売却・M&A・他社を買収する案が考えられる。もちろん、それには上場を上回る策と信用感を打ち出せなければ、逆効果だ。

上場時にしっかりとBESTとWORSTのケースを想定した株主対策を考えた上での上場が重要である。引き受け主・副幹事がそれらの点を考慮する事は期待出来ず。上場をメインでアドバイザリーする先が重要となる。
また、上場時の環境も大切である。時制の資本市場の状況・金利や景気・世界資本資金の流れ、特に金利の推移・トレンドは重要だ。米国ではFF金利(Federal Funds Rate)プラス・マイナス2%前後が市中金利。仮にFF金利が4%であれば、銀行借入金利は6%前後、預金金利は2−3%。10年国債は4−5.5%。株式はこれらの指標、“銀行借入金利6%前後”や “10年国債4−5.5%”金利をリターンで上回り、倒産・暴落なく信用を勝ち取れれば購入者・株主は増え、株価は上がるという事が鉄則。日米の個人株主を味方に取り入れる事も重要で。株価の上昇・配当がそのリターンの示す方法になる。これらを真面目に、根気よく説明・説得をし続け、信頼を維持し続ける事がIR活動、ロードショーになる。既存・新規、プロの投資家、年金運用者、個人投資家。日米、両国でのIR活動が可能となる。

上の図2になるような株価対策、景気と会社の先行きの想定、そしてその説明と説得計画だ。
米国で上場をされる中小企業の殆どが上場を果たした後はメールやリモート会議で専門家のアドバイスを聞き、PR/電子株式公示で会社の決算やニュースを報じているだけ。それでは株価は下がる一方となってしまう。