コロナ後の成長戦略の一つとして、世界トップの経済圏であるアメリカへの進出を検討する事業者様も多いかと存じます。
そこで、本記事では弊社の20年の実績をもとに、アメリカの会社設立の流れ、ポイントを徹底解説していきます。進出形態・進出州の選び方はもちろん、会社設立にかかる期間と費用の目安、そしてビザ取得の際に必須となるビジネスプランの作成のポイントも細かくご紹介しています。
米国での会社設立を検討されている方のご参考になれば幸いです。
Contents
- 1 アメリカ進出3つのリスク
- 2 M&Aを利用したアメリカ進出のメリット・留意点
- 3 アメリカ会社設立の13ステップ
- 4 ステップ1:進出形態の選択
- 5 ステップ2:会社設立 (法人設立) の州・エリアの選択
- 6 ステップ3:会社名の決定
- 7 ステップ4:ビジネスプラン (事業計画書)の策定
- 8 ステップ5:定款の作成と登録
- 9 ステップ6:取締役を選任&第一回取締役会の開催
- 10 ステップ7:雇用主番号 (EIN) の取得
- 11 ステップ8:ビジネスライセンスの取得
- 12 ステップ9:Statement of Information の申請
- 13 ステップ10:銀行口座の開設
- 14 ステップ11:株式の発行
- 15 ステップ12:州雇用者番号の取得 (State Tax ID ナンバーの取得)
- 16 ステップ13:「BE-13」または「BE-13 書類提出免除」の提出
- 17 まとめ:アメリカ会社設立の際は専門家へ相談を
アメリカ進出3つのリスク
会社設立のポイントの詳細に入る前に、アメリカ進出のリスクについてご紹介していきます。
これまでの弊社の経験からすると、日本からアメリカに新規で進出し、思うような結果が出せるまでには5年以上、現地の会社・専門家と上手く協業ができたとしても、2〜3年程度はかかります。
では具体的なリスクとしてどのようなものがあるのでしょうか。
大きく次の3つに集約されると考えております。
1. 日本との文化の違い・多様性
United Statesという名前の通り、アメリカは他人種・移民が集まる国。そのため、アメリカ全土で共通するような単一の常識がほとんどありません。
アメリカという国単位で物事を見るのではなく、その場所・企業・個人文化を読み解くことが米国での成功につながります。
2. 日本本社がついていけない現地のスピード感
アメリカ事業の決裁権を日本本社が握っている場合、軌道に乗るまでの期間はさらに長くなります。
判断をする方が日本の常識では、米国での市場の速度に付いて行く事は難しく、即決できるスピード感と状況に応じた予算配分が成功には欠かせません。
3. 駐在員・赴任者のビザ取得の難しさ
アメリカ赴任者の長期就労ビザ取得は年々難易度が上がっています。
ビザ取得の難しさはトランプ政権が終わった今もそこまで大きく変わりません。
実際に、会社登記はしたもののビザが取得できずに米国事業が開始できない会社も多くお見受けます。
進出の初期段階では可能な限り出費を抑えた拠点立上げが重要となりますので、例えば、いきなり長期の赴任ビザ取得を目指すのではなく、まずは長期出張のビザを取得し、その後に長期の赴任ビザに変更することが効率的です。
詳しくは以下の「ステップ4:ビジネスプランの策定」にて解説しますが、移民局に通用する事業計画作り、事業の必要資金やビザ取得申請時に見せるべく資金は十分かなど、堅実なビザ取得の計画作りと、却下された際のリスクに備えておく必要があります。
アメリカでの事業運営の上で駐在員のビザは常に重要な課題。ビザを考慮した事業計画作りが必要。
これらのアメリカ進出リスクを低減するために、米国現地の会社をM&Aしてアメリカ進出をするという方法もあります。
M&Aを活用したアメリカ進出のメリット・デメリットをご紹介していきます。
M&Aを利用したアメリカ進出のメリット・留意点
アメリカに新規進出をする際に、必ずしも自社で米国子会社を新規で設立する必要はありません。M&Aを活用してアメリカ進出を行うことも検討すべきポイントです。
M&Aのメリット1: 米国事業の先行きが読みやすくなる
アメリカ現地の会社を買収することで、市場参入が早期に実現します。
買収後、経営者や従業員を引き継ぐことで、新規雇用やゼロからの組織づくりは不要。
買収先の会社の売り上げも本社と連結計上ができますので、財政面でも先行きが読みやすくなります。
重要なポイントは本社から管理をする人の経営管理能力。また買収後が肝心となります。
M&Aのメリット2:日米双方向の拡販が狙える
M&Aをすることで、日本本社の製品やサービスを販売する米国市場のルート・物流ネットワークの確保、そして必要な許認可・ライセンスがまとめて手に入ります。
同時に、買収先の会社の製品・サービスを日本市場にて販売することができ、会社全体の売上・利益の拡大が狙えます。
> その他のアメリカM&Aのメリットはこちらのページをご参照ください。
M&Aの際に留意すべきこと
一方で、M&Aを行う際にもリスクが伴います。
特に「アメリカでのM&Aは5件に1件しか成功しない」と言われており、特に文化が大きく異なるアメリカ企業の買収を行いますので、そのリスクは大きくなります。
以下に、アメリカでM&Aをする際に押さえておくべき留意事項の一例をご紹介します。
(※アメリカM&Aのリスクや成功の秘訣、具体的な事例はこちらの記事をご参照ください。)
[留意すべきポイント]
- 殆どの事業で買収先の人員が退社した際には価値が薄れる事。
- 人員を保持する際の経営案を保持して買収に望む事。
- 駐在員を含めた従業員インセンティブプランを初日から持って会社と向き合う事。
- M&Aの際は各分野で専門家の知見を仰ぐことは重要。税理・会計・法律・業界等々、米国でのM&A後の管理は、経験・実績がある専門家の支援は不可欠。
専門家との二人三脚でM&Aを行うことで、失敗する確率を少しでも下げることができる。
ここまで、アメリカ進出のリスク、M&Aの可能性について見てきました。
ここからは詳細にアメリカでの会社設立の流れ、具体的なポイントをご紹介していきます。
アメリカ会社設立の13ステップ
アメリカでの会社設立の流れと各ステップでのポイントをご紹介する前に、
大まかな全体感をお伝えするために、アメリカでの会社設立の際にかかる期間の目安と費用の目安をご紹介します。
また、会社設立に関して、専門事務所あるいは弁護士を通さず、自分自身で登記をすることもできますが、これまでの経験上、必ず問題は起きるのでおすすめはしません。
(※本記事も法的なアドバイスをするものではなく、あくまで参考情報としてご覧ください。)
米国会社設立にかかる期間の目安は2〜4ヶ月程度
アメリカでの会社設立にかかる全体の期間として、必要な情報と決断すべき事項が決まっていれば登記自体は1〜3週間で完了します。
ただし、これまでの経験上、実際には必要な情報収集と決裁にかかる時間、つまりビジネス判断・本社の稟議・採決に時間がかかります。これから詳細を固めていく場合は、早くても半年程度の時間の余裕を見ておく必要があります。(※少数オーナー企業であれば1〜2ヶ月程度)
米国会社設立にかかる費用の目安は3,000〜6,000ドル程度
次にアメリカでの会社設立にかかる費用として、アメリカの現地法人(※)を登記する場合、登記簿・定款・役員・株主議事録等々と庶務が発生しますので、平均的に3,000〜6,000ドル程度。
一方、支店(※)の登記は庶務が殆ど簡略されるので平均的に費用は3,000〜4,000ドル程度。ただし、こちらの費用は登記後の事業に必要な庶務は含まれていないので注意が必要です。
※アメリカで会社設立をする際に一般的な選択肢として、上記の「現地法人」と「支店」があります。詳しくは次の「ステップ1: 進出形態の選択」の箇所でご説明します。
上記の費用は株式の発行、届出の有無などで変動します。
弁護士によっては細やかな庶務をしないケースと株式の発行を省く場合もありますので、費用に含まれる項目をご確認の上ご契約されることをおすすめします。
また、登記をしたからと言って事業が即遂行できるわけではありません。様々な届け出、認可、ライセンス、保険が必要となります。事業によって異なるので、必ず専門家に相談することが必要です。
さらに登記後、雇用/会計/法務等々の会社の運営維持が発生します。
運営維持に関しては、現地の企業運営の経験者(アドミニストレーター)スタッフの雇用、もしくは専門家に外注する方法があります。
雇用であれば年収$6万程度から、専門家/社外注であればおおよそ年間$4〜5万ドル程度が相場でしょう。昨今は管理業務のために駐在員を送ったり、現地雇用はせず、現地専門家と組んで効率的に米国拠点を運営される日系企業様が目立ちます。詳しくは是非相談ください。
会社の運営を行うアドミニストレーターを社内で雇用すると、コストがかかる。初期進出時は外注する会社が多い。
それでは、具体的に各ステップについて解説していきます。
ステップ1:進出形態の選択
アメリカでの会社設立の最初のステップは「進出形態の選択」です。
進出形態には大きく以下3つのパターンがあります。
- 現地法人
- 支店
- 駐在事務所
米国への事業展開時に再確認をすべきことは、進出の目的。つまり販売、仕入れ、本社支援、調査、研究などです。目的次第で登記の形態の選択肢は変わります。
進出形態 | 活動内容 | 責任所在 |
現地法人 | 営業活動含む 全ての企業活動 |
アメリカ子会社 |
支店 | 営業活動以外のほぼ全ての企業活動(※) | 日本本社 |
駐在事務所 | 調査・研究や本社支援が中心 | 日本本社 |
※厳密には禁止されている活動もあります。詳細はお問い合わせください。
これまでの経験上、進出企業のほとんどは「現地法人」を選択します。
その理由は活動内容の自由度と訴訟などのトラブルが生じた際の責任所在が日本本社に及ばないためです。
それではそれぞれの進出形態を見ていきます。
A. 現地法人
一つ目の進出形態は「現地法人」です。
現地法人は有限責任となります。販売拠点、製造品の権利や特許に絡む様な事業上様々なリスクが伴う場合には、現地法人化する事が重要です。
現地法人の種類として一般的なものとして、「C-Corporation」と「LLC」の2つがあります。
A-1. C-Corporation
米国のC-Coorporationは日本の株式会社に相当します。登記簿、定款書、株式の発行、議事録、株主総会書等々が必要になります。
日系企業の米国法人はほとんどがこのC-Coorporationで、日本本社が100%の株式を保有する場合は、特に株式の発行をされないケースが多いです。他社との合弁である場合には株式の発行をする事をお勧めします。
会社の経営に大きな影響を与える決議事項は、毎回役員・株主の賛同・同意が必要。そのため、役員/株主総会が必要となります。ただし、全一致であれば書面で行うこともできます。
A-2. LLC
アメリカ現地法人としてのLLC登記は、日本本社(株主)の米国での納税義務が発生する為、避けてください。LLCを活用するケースとしては大きく以下いずれかとなります。
- 既にアメリカ現地法人が存在し、その傘下に米国子会社を追加、または他社との合弁事業等を起こす際
- アメリカ現地在住の個人事業主の延長
例えば、オーナーシップや株式の譲渡が容易である点や、税務上パススルー税制(株主が直接課税=法人税と個人税の二重課税を回避)など、LLCはあくまで小規模事業者を前提に作られた法人形態です。日系企業の米国法人/支社企業には適していません。
株主総会は全会一致であれば、株主総会を書面で行うこともできる。
B. 支店
二つ目の進出形態は「支店」です。
支店の主な趣旨は本社の支援出先であると言う事。日本本社が米国の取引先と商流がある際、その支援拠点となるケースが多いです。
また本社の為の米国市場での調査や、その他の支援をする際には支店の登記を選択する事となります。設立州以外の州でも事業活動を行う場合、その州政府に外国(州外、海外)法人として登記する必要があります。
税務申告は、法人格と同様に給与源泉/個人所得税および各州の郡への固定資産税の納税義務はあり、州税務当局とIRSへの年1回の報告書の提出が必要です。国税局(IRS)の納税者番号(EIN)を取得する必要があります。
C. 駐在員事務所 (登記なし)
三つ目の進出形態は「駐在員事務所」です。
日本企業で米国の駐在員事務所と称して、”何の登記”もしないと言う実態は存在しません。
米国では、『駐在員事務所』という事業体は登記上存在しないため、何かしらの物理的な存在 (PE=Permanent Establishment)が発生する場合は、その州での登記(支店登記と同様の措置)が必要となります。
独自でその様に住所や連絡先を決めて勝手に事務所と名付けていれば別ですが、事業を遂行することは考えられません。人がいたり、事務所がある場合には必ずその州に事業の登記は必須です。
D. その他の法人形態
前述のとおり、日本企業の米国拠点の法人形態としては、支店登記(Register To Do Business in California)あるいは現地法人登記(C-Corporation)となります。
その他、(Sole Proprietorship、Partnership、S-Corporation、LLC、LLP)などの選択肢はありますが、これらはプロフェッショナル(弁護士、会計士)や米国在住者が直接の株主であり、税制優遇を受ける際の選択肢となります。
Sole Proprietorship
Sole Proprietorshipとは個人事業主として商業を行う事をいいます。
個人名、あるいは米国(州)での商号 (DBA=Doing Business As)をそれぞれの州、郡で取得をします。
個人の直接責任となるので、個人名義でリスクが少ない商業には適していますが、債権債務を有限に抑えたい場合はお勧めはしません。何かしらの法人格の登記をお勧めします。
税務申告は、法人格と同様に給与源泉/個人所得税および各州の郡への固定資産税の納税義務はあり、州税務当局とIRSへの年1回の報告書の提出が必要です。国税局(IRS)の納税者番号(EIN)を取得する必要があります。
Partnership
Partnershipとは2人、あるいは2社以上の人間あるいは企業・事業体が合弁で事業を行う際に用います。
日系企業と米国企業との調査や合弁開発、販売などに適しています。税務上パススルー税制となるので法人課税されないため、事業の経費・損失は各々の事業体・個人の所得と相殺ができます。
税務申告は、法人格と同様に給与源泉、個人所得税および各州の郡への固定資産税の納税義務はあり、州税務当局とIRSへの年1回の報告書の提出が必要です。国税局(IRS)の納税者番号(EIN)を取得する必要があります。
S-Corporation
S-Corporationは株式会社であり、通常の会社(C-Corporation)と同様に定款、登記簿、株式の発行が行われる形態です。
法務上はLLCと同様に有限責任を負い法人税が掛からない(利益を直接個人の所得として個人税務申告に含めて申告をします)ことが利点です。個人・パートナーなどとで事業を行いますが、それらの株主が税務上パススルー税制であり、パートナーシップとして扱われます。
様々な会社設立の形態があるが、基本的にはC-Corporationが一般的。
ここまで主要な進出形態を見てきました。
進出形態が決まったところで、会社設立先の州・エリア選択に移ります。
ステップ2:会社設立 (法人設立) の州・エリアの選択
会社設立の州選びの際、原則は事業を行う州(雇用/事務所を賃貸する場所)で登記をする事をお勧めします。
進出後に複数州にまたがって拠点を広げる計画がある場合は、税や州法が柔軟な州に本拠点を登記する案も考えられます。例えばデラウェア州、ネバダ州、ユタ州などが選択肢としてよくあがります。ただ、米国での本拠点は(上場等理由が無い限り)全く関係の無い州に登記することは二重手間となる事からお勧めはしません。
登記先の州として、デラウェア州に登記を進める情報をよく聞きますが、前述のとおり、米国の複数州に拠点を構える様な予定がない限りは、事業を行う州で登記をされてください。
事業を行う州で登記をすれば、費用や手間は一つの州のみで済みますが、事業を行う州とは別の州で登記をすると、二つの州での登記が必要となり、経費も全て二重となります。
会社設立州の選び方 その1 – 業種・産業
会社設立州の選び方として、業種、産業区域、目標市場、人材、機材、物流、治安など、様々な要因が判断材料となります。
拠点の中心地としては、カリフォルニア州(ロサンゼルス、サンフランシスコ、サンノゼ)、ハワイ州(ホノルル)、ニューヨーク州、イリノイ州(シカゴ)、ニュージャージー州が主となります。
実際に帝国データバンクの2020年のリリースでも、日本企業の進出州として上記の州の占める割合は多くなります。
カリフォルニア州 | 1,719社 |
ニューヨーク州 | 657社 |
イリノイ州 | 396社 |
ハワイ州 | 378社 |
ミシガン州 | 258社 |
テキサス州 | 255社 |
オハイオ州 | 251社 |
ニュージャージー州 | 193社 |
ワシントン州 | 180社 |
デラウェア州 | 171社 |
※帝国データバンクのリリースより一部抜粋。
会社設立州の選び方 その2 – 製造業の場合は物流要因も
製造業拠点の設立の場合、各産業の特有要因が重要となり、選択肢は絞られます。実際には物流、経費人件費、土地、労働環境等々の要因で決まる事が多いでしょう。
また中西部州領域は、主に製造業が中心。イリノイ州(シカゴ)、オハイオ州は穀物、自動車、鉄鋼などの製造業やその原材料関係各社が多くなります。
西海岸では食品/商社/メーカー(技術系)/ハイテク/通信/物流/娯楽等々が主流となります。
人気のデラウェア州での登記の可否
米国では会社設立州と実際にビジネスを行う州を分けることができます。
会社設立州として名前があがるのがデラウェア州、ネバダ州、ユタ州等がありますが、よほどの理由がない限り事業を行う州での登記をお勧めします。
デラウェア州に登記だけして、実際はカリフォルニア州で支店登録を行い、カリフォルニア州で営業活動をするという形態は可能ですが、特にメリットがなければお勧めしません。前述のとおり、全て二重手間となります。
Fortune 500の企業をはじめ、上場会社の多くがデラウェア州で登記されています。
その主な理由は州法が多種に渡っていたり、法的な事例が多々あることから、訴訟/起訴/法的な判断の際には多くの事例がある州とされています。
他にも、スタートアップを立ち上げて、ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティー等からの出資を受ける際には、州法や出資者の都合でデラウェア州(上場法令等が柔軟)での登記を要求されるケースがあります。
一方、登記をする州と実際の事業を行う州が違う場合にはその州での登記も必要となり、手間も、税務申告等も二重手間となりますのでそのメリット・デメリットをよく判断する事が重要です。
カリフォルニア州での登記の魅力
カリフォルニア州で事業を予定している法人は純粋に当州で登記する事が望ましいでしょう。
カリフォルニア州はIT系、半導体、バイオ、医療、食品、倉庫、物流、肥料、エネルギー、自動車技術、人工栽培技術、新規技術開拓、などいずれの事業においても全米上位で、米国で最大の経済州です。
北カリフォルニアはITを中心とした投資/新技術系、サンフランシスコ、サンノゼ、シリコンバレーにはApple、Google、Facebook、Oracle、SalesforceなどのBig Tech、Gilieadなどの研究、Uber、Netflixなど新事業など世界的に影響力を与えている企業の本社が置かれています。
南はロサンゼルスを中心とした娯楽、ファッションが盛んな地域として周知です。また州全体の地判は農作産出地帯でもあるのでナッツ、穀物肥料の多くは日本へ輸出されております。
これら関連の日系企業が南北にわたって数万社とカリフォルニア州で支店、支社を登記されています。
カリフォルニア州には有名テック企業を中心とした巨大なエコシステムが存在する。
ステップ3:会社名の決定
進出形態と会社設立州の目処がたった段階で、具体的にアメリカ子会社の会社名を決めていきます。
以下では会社名を決める際のポイントをご紹介していきます。
会社名を決めるときの基本的なルール
法人形態によって、つけられる名称は様々です。
会社名の末尾につける文言に関して、以下の通り違いがあります。
例
C-Corporation | Corporation、Company、 Incorporated、 Incorporation、 Corp、 Co、Inc |
LLC | Limited Liability Company、LLC、 L.L.C. |
他にもLimited、Ltd、PC、は日/欧州系の企業の米国事業登記の名称となり、Professional Coporationは弁護士/税理士事務所です。
また、社名はその州で、同一(あるいは類似している)社名の取得はできません。登記の際に事前に調査、州政府への確認が可能です。米国では州単位での社名(取得)ですので、他州で同一の社名が登記されていても同州でなければ登記は可能です。
基本的には同州で同じ名称での登録はできないが、重なった場合は以下いずれかの方法を取る事になります。
1) 全く異なった名前にする
2) 他の単語を加えて違う会社であることを明示する
3) 既存の会社名を名前を買い取る
屋号・商標 (トレードマーク) の調査・確認
米国で物を扱う場合(社名含め)、初期にそのロゴや名称の権利が米国で他者に侵害を及ぼさないかの調査は必要です。無形のサービスの場合でもその名称、ロゴ、ノウハウも同様になります。
実際に名前のある商標やパッケージを販売する会社の場合は商標登録を行う予定がなくても、リサーチをしっかり行うことで、他企業への権利侵害による訴訟のリスクを軽減することに繋がります。
商標登録のリサーチは専門弁護士、コンサルタントに委託をする事をお勧めいたします。弊社でも調査サービスを提供していますので、詳しくはお問い合わせください。
ドメイン名の確認
米国で事業をする際に、自社・商品・サービスの紹介は一目で解る必要があります。
米国事業に特化したホームページやインスタグラム、ファイスブック、リンクドインなどのページは必須です。ホームページは必ず米国企業(もしくは拠点)である事を記載して現地でホスティングする事をおすすめします。
また、日本のドメインの使い回しではなく、米国独自のドメインも取得されてください。
希望するドメイン名取得の可否について、ドメインの登録会社 (例: GoDaddy)などから確認ができます。
ステップ4:ビジネスプラン (事業計画書)の策定
会社名が決まり、アメリカへの進出形態と進出先の目処たった段階で「ビジネスプラン (事業計画書)」の策定を行います。
アメリカに駐在員を赴任させる場合、駐在員のビザ取得を考慮してビジネスプランの準備・手続きを進めていきます。
支社支店の登記自体はほとんどのケースで問題なく完了できますが、問題は駐在員就労ビザの取得。ビザ取得のために、登記と並行して以下の手続き・書類の準備が必要となります。
- 事務所の賃貸
- 銀行口座開設後十分な資金・資本金の送金
- 事業計画書
- 保険等の証明
- 各種ライセンスの証明
これらの書類や準備に6ヶ月程度かかることを加味すると、総合的には6〜12ヶ月の準備期間の余裕は必要になります。
ビジネスプランを作成する際に特に押さえておくべきポイントは以下の通りとなります。
- 会社内部でも活用できるように、真実の計画内容を準備する。
- 資金繰り・源泉・税金の予測、利益、キャッシュフローの予測はビザ取得の重要ファクターとなるので、綿密な計画を行う。
- (最重要)『アメリカ全体・州にとってメリットがあるか』という点を常に念頭において準備する
アメリカへのメリットの見せ方として、具体的には
- 雇用、資金を生むなど、米国にとってのメリットを各項目毎に重点を置いて記載。
- 米国に資金が流れる
- 米国にはない事業が生まれ、職/雇用が増える事
- 米国には無い技術が移管される。
- アメリカ子会社に送金される資本・資金がどの様に活用・投資され、どの程度の期間持つか、追加資金が送金されるか
等々の情報です。
何年も赤字で現地雇用もせず、駐在員数名を送り込んで本社に売り上げ・利益をもたらすような会社は、赴任者のビザ認可は困難と評価されてしまいますので注意が必要です。
では具体的にビジネスプランに含めるべき項目とは何か。以下で解説していきます。
ビジネスプランに含める項目
ビジネスプランを作成する際は要点を絞って、おおよそ5〜10ページ程度でまとめるのが理想です。単なる自社・自身の紹介文にならないようにしてください。
ビジネスプランを作成する主な目的として、資金調達、借入、合弁事業、ビザ取得などの目的が想定されます。ビジネスプランの使用目的によって強調/主張をする部分は異なりますが、以下、最低限含める項目(順序等は変動)をご紹介します。
(※各々ビジネスプラン作成の際は可能な限り専門家の知見を仰ぐことを推奨致します。)
- 経営理念 (Executive Summary)
およそ1ページ以内にまとめます。大体のケースでは、この要約しか読まれません。この要約が目的に逸れていると、その点を指摘され(ビザ/資金調達)申請では即却下され兼ねないので注意を。
- 会社概要 (Company Overview)
アメリカ子会社の株主/役員、主要人員、資本、住所、
- 本社の説明
日本本社の歴史/売り上げ、社員数、住所、主要人員)
- ミッションステートメント/企業方針 (Mission Statement / Corporation Goals and Objectives)
アメリカ子会社のミッションステートメントや企業目標と目的
- 産業 (Industry)
アメリカ子会社に関連する産業
- 産業の歴史 (History)
上記の産業の歴史
- 市場 (Market)
アメリカでの市場
- 米国で扱う製品やサービス (Products & Services)
- 自社製品の優位性と劣位性を分析 (SWOT Analysis)
- 市場状況・ビジネス環境 (Business Environment)
- 事業戦略・戦術 (Company Strategy)
- 会社組織図 (Organization Chart)
アメリカ子会社の組織図と本社を含めた組織図
- 事業収益計画と予算案 (Forecasting and Budgeting)
最も重要な項目です。資金調達やビザ取得が目的の際には、資金の活用先、時期、資本金、キャッシュフローの要因が一目瞭然に解ることが重要です。おおよそ概要の説明に半ページ使用します。
> アメリカ会社設立の際のビジネスプランのテンプレートをこちらよりダウンロード可能です。
使用目的に合わせたビジネスプランの作成が重要。
アメリカでの個人起業のための貿易・投資ビザ(Eビザ)を申請する際の注意点
駐在員のビザとして、選択肢のひとつとしてよく上がるのが貿易・投資ビザ (Eビザ)です。
E(E1またはE2) ビザ申請を行う際には、前述の項目に加えて、先の5年間のビジネスプランの作成と提出が求められます。
ビジネスプランを通じて、事業が成功する見込みがある、5年以内に成功ができなくても潤沢な資金がある、準備ができうる事を説明できる事が重要です。
また、具体的には最低限、投資家(起業する人)とその扶養家族を養う事ができるよりもはるかに上回る収益を上げられる事を証明し、具体的に各々Eビザの目的(投資あるいは貿易)の詳細、金額、貿易の輸出入詳細によって、現地の新たな産業や雇用を創出することを証明する採用計画の作成が必要です。それらを上手にわかりやすく、説明する必要があります。
ビザ発行/申請取得の現状を把握し、ビジネスコンサルタントや弁護士等の専門家の知見を仰ぐ事は非常に重要です。計画から取得、赴任までには一年程度はかかるので余裕を持って準備をすることをおすすめします。
ビザ取得には信頼できるビジネスコンサルタントや弁護士の活用が不可欠。
ここまでの手続きは決定事項が多い項目でしたが、
残りのステップは会社設立の際の手続きの内容がメインになります。要点のみをかいつまんでご説明していきます。
ステップ5:定款の作成と登録
支社登記の際には、登記簿 (Articles of Incorporation)、定款書 (By Law)、その他、初期の議事録/投資契約書/株主同意書が必要となります。
初期定款書作成時には以下の項目を含める必要があります。
- 会社名
- 事業目的 (既に入力済み)
- 送達代理人
- 授権株式数
- カリフォルニア州の住所 (カリフォルニア州の場合)
- 免責・補償 など
(※上記はあくまで一例です。上記以外にも記載する事項があります)
また、登記簿 (Articles of Incorporation) の提出方法として
- オンライン
- 郵便
- 直接提出
上記3つの方法があリますが、昨今では代行代理人を通じて申請をする事がほとんどです。
カリフォルニア州にてオンラインで提出する場合は、こちらのページから提出が可能です。
ステップ6:取締役を選任&第一回取締役会の開催
定款作成後、取締役を選任し、第一回取締役会の開催を行います。
カリフォルニア州では第一回取締役会は書面決議で完結できます。決議書の中には以下のような決議内容(例)を記載します。
- 定款登録の報告と承認
- 会社規則(Bylaws)の採択
- 株券様式の決定
- 会社印の決定 (カリフォルニア州では使用する義務はなし)
- 本社住所の決定
- President、Secretary と Treasurer の選任。この 3 役は一人が兼任することも可能(米国に在住に必要はない)
- 銀行口座開設の権限がある役員の決定
- 会計士の選任
- 会計年度の選択
- 株式発行
- 設立費用負担の承認
(※上記は一例です。)
次に、EIN納税者番号の取得、各種保険の加入、ビジネスライセンス取得、郡への届け出、労働局や消費税局への届け出などを行っていきます。
ステップ7:雇用主番号 (EIN) の取得
雇用主番号 (EIN – Employment Identification Number)の取得を行います。
ステップ10の銀行口座開設に、このEINが必要なので、ほとんどのケースでEINの取得は必要となります。
申請者は ソーシャルセキュリティー番号(SSN – Social Security Number) が必要です。
アメリカに新規進出する場合は永住権や就労ビザがないケースが多く、SSNが取得できないので代わりにITIN(非居住者納税者番号)の取得が必要です。日本からのITINの取得の方法についてはこちらの領事館のページをご参照ください。
手続きは、IRSにて申請を行います。こちらのIRSのページからオンラインからの申請も可能です。
ステップ8:ビジネスライセンスの取得
ビジネスを行う市当局にてビジネスライセンスを取得します。
また、事業形態によってはビジネスライセンスとは別に食品取扱業に対する保健所の許可等、様々な許可取得、申請が同時に必要となります。
ステップ9:Statement of Information の申請
会社年次情報更新書 (Statement of Information) は毎年、州政府へ会社の情報(住所、役員、Agentの情報を記載し)申告する事が義務付けられています。
登録した後毎年、記述用紙が送られてきますので期日までに返送する必要があります。
ステップ10:銀行口座の開設
次に銀行口座の開設を行います。
銀行口座開設は非常に面倒です。銀行員担当者の紹介を受けることでスムーズに手続きを進めることができます。
[銀行口座開設時に必要な書類の一例]
- 開設時には顔写真付き身分証明書(パスポートなど)
- IRSからのEIN通知書類
- Articles of incorporation(定款)
- Corporate Resolution(口座開設とサインする人を定めた取締役会決議)
- 会社住所が記された書類
- 最低デポジット金額
ステップ11:株式の発行
株式の発行には連邦政府レベルと州レベルの証券法の要件を満たす必要があります。
大半が未上場の株式の発行(要確認)ですので証券法等には関わらない発行となりますが、特に外部から資金出資を受ける場合、ストックオプションを発行する場合、上場を目指している場合、株式発行は原則弁護士、専門家にお願いするようにしてください。
ステップ12:州雇用者番号の取得 (State Tax ID ナンバーの取得)
従業員を雇用し、給与を払う場合、State Tax IDの取得や労働局 (EDD)への登録が必要です。
失業保険 (State Unemployment Tax)と傷害保険 (State Disability Insurance) の掛け金を源泉徴収して EDDに提出する際にState Tax IDが必要となります。
雇用に関しては州と連邦政府への税金が各種発生します。
EDDへの提出はこちらのページからオンラインでも可能です。
ステップ13:「BE-13」または「BE-13 書類提出免除」の提出
海外法人がアメリカ現地会社における10%以上を保有(議決権)を所有する場合、財務状況をアメリカ商務省経済統計局へ提出する必要があります。
つまり、日本本社が100%出資して、アメリカ子会社を立ち上げる場合、BE-13の提出が必要となります。こちらのページからオンラインからの申請も可能です。
まとめ:アメリカ会社設立の際は専門家へ相談を
本記事ではアメリカの会社設立の流れと各ステップごとのポイントをご紹介しました。
また、M&Aを上手に活用すれば、新規設立に比べて大幅にリスクやコストを下げられることもご紹介しました。
当たり前ですが、大切なのは会社設立の後の事業運営となります。
これから新たにアメリカでの会社設立を目指される場合、ほとんどのケースで現地の専門家を雇い設立業務を進めていくことになります。
会社設立が終わればお終いというのではなく、会社設立後の事業運営を見越して、信頼できる専門家・パートナー探しを設立準備段階から行うことをおすすめします。
ジャパンコーポレートアドバイザリーでは、サンフランシスコ・シリコンバレーを拠点に、アメリカ全土にて20年以上の実績がございます。会社設立はもちろん、営業・マーケティング、管理業務、経理・税務、事業のM&Aなど、幅広いサポートを提供しております。
無料相談も受け付けておりますので、会社設立でお困りの方はこちらのお問い合わせページよりお願いします。