世界最大の証券取引所ニューヨーク証券取引所 (NYSE)。
ソニー、ホンダ、三菱、トヨタ等の優良日本企業も上場しています。

本記事では、ニューヨーク証券取引所 (NYSE)についてご紹介していきます。NYSEの概要から、日本の上場企業例、上場要件、上場手順、そしてNYSE上場のポイントを詳しく解説していきます。

> 米国の他の株式市場との比較等はこちらのアメリカ上場の記事をご確認ください。

Contents

ニューヨーク証券取引所 (NYSE)とは

1817年に設立された歴史のある証券取引所。
ロンドン証券取引所に次いで世界で2番目に古く、規模は世界最大です。

ニューヨーク証券取引所の正式名称は New York Stock Exchangeで、その頭文字をとって、NYSEと呼ばれます。Big Boardと呼ばれることもあります。

上場企業として、マクドナルド (MCD)やジェネラルモーター (GM)、コカ・コーラ (KO)など伝統ある企業が並びますが、近年ではハイテク企業の台頭の影響もあり、Twitter、アリババ、セールスフォース等のハイテク企業の数が増えています。

ニューヨーク証券取引所 (NYSE) の3つの市場

ニューヨーク証券取引所 (NYSE)自体が時代の変貌により、様々なM&Aを経て再編を遂げ、その影響もあり、現在は大きく3つの市場が存在します。

1. NYSE (Main Board)

一般的に、ニューヨーク証券取引所と言うと、こちらのMain Board (通称)を指します。
日本でもソニー、本田、トヨタ、三菱などの企業が上場しています。

2. NYSE American

旧アメリカ証券取引所 (American Stock Exchange) を買収した市場でMid Cap(中堅規模)からLarge Cap(優良企業向け市場)の企業が上場しています。

3. NYSE Arca

ETP(Exchange Traded Product) 向けの電子商取引所。2006年にニューヨーク証券取引所と経営統合。NYSE傘下ですが、独立して運営がされており、NYSEと比較して上場基準が緩く、新興企業が多く上場しているのが特徴です。

ニューヨーク証券取引所 (NYSE)とNasdaq (ナスダック)の違い

ニューヨーク証券取引所 (NYSE)と比較して語られる事が多いのが、Nasdaq (ナスダック)
Nasdaq (ナスダック)はニューヨーク証券取引所 (NYSE)に次いで世界で二位の時価総額を誇る株式市場となります。

ニューヨーク証券取引所 (NYSE)は優良企業兼、老舗の企業が多く見られることが特徴です。

しかし、昨今では時代の移り変わりと並行しマイクロソフトのようなIT企業でも安定期を迎えた企業をDOW30INDEXの指標銘柄に入れる動きがあります。

一方、Nasdaq (ナスダック)はハイテク企業やインターネット企業などの新興企業で構成されており、アメリカの時価総額トップ (2022年7月時点)のアップル (AAPL)を初め、、アマゾン・ドット・コム (AMZN)、FacebookやInstagramのメタ・プラットフォームズ(FB)、テスラ(TSLA)、エヌビディア (NVDA)、そしてGoogleの親会社のアルファベット(GOOG & GOOGL)等が上場しています。

> ナスダックの概要・上場条件等の詳細はこちら


ナスダックは常に人が行き交うタイムズスクエアに位置する

ニューヨーク証券取引所 (NYSE) 上場の日本企業例

ここまではニューヨーク証券取引所 (NYSE)の概要を見てきました。
ここからはニューヨーク証券取引所 に上場している日本企業の例をご紹介していきます。

1. Sony Group Corporation (NYSE: SONY)

ソニーグループ。1970年9月に上場し、日本で初めてニューヨーク証券取引所に上場した企業です。また、1961年にADR (※) 第一号に認可された企業としても有名。

※ADRとは
ADRとは American Depositary Receiptの略で、米国預託証券を指します。
日本等、米国外の市場で上場した株式をもとに、預託銀行が証券を発行。その証券を元に、ニューヨーク証券取引所やナスダックなどのアメリカ市場で上場する方式です。

 

売上規模: $US 9.92 trillion(2022年3月期)
時価総額: $US 108.94 billion (2022年8月時点)

 

2. Honda Motor Co., Ltd. (NYSE: HMC)

本田技研工業。1977年2月に上場。

売上規模: $US 14.55 trillion(2022年3月期)
時価総額: $US 43.48 billion (2022年8月時点)

 

3. Mitsubishi UFJ Financial Group, Inc. (NYSE: MUFG)

三菱UFJフィナンシャル・グループ。当時は三菱銀行として上場し、1989年9月に日本の金融業として初めてニューヨーク証券取引所に上場しました。

売上規模: $US 5.14 trillion(2022年3月期)
時価総額: $US 66.72 billion (2022年8月時点)

 

4. ORIX Corporation (NYSE: IX)

オリックス。1998年9月に上場。

売上規模: $US 1.58 trillion(2022年3月期)
時価総額: $US 19.91 billion (2022年8月時点)

 

5. Toyota Motor Corporation (NYSE: TM)

トヨタ自動車。1999年9月に上場。

売上規模: $US 31.38 trillion(2022年3月期)
時価総額: $US 219.66 billion (2022年8月時点)

 

6. Canon Inc. (NYSE: CAJ)

キヤノン。2000年9月に上場。

売上規模: $US 3.51 trillion(2021年12月期)
時価総額: $US 25.05 billion (2022年8月時点)

 

7. Nomura Holdings, Inc. (NYSE: NMR)

野村ホールディングス。2001年12月に上場。

売上規模: $US 1.26 trillion(2022年3月期)
時価総額: $US 11.25 billion (2022年8月時点)

 

8. Mizuho Financial Group, Inc. (NYSE: MFG)

みずほフィナンシャルグループ。2006年11月に上場。

売上規模: $US 2.71 trillion(2022年3月期)
時価総額: $US 29.9 billion (2022年8月時点)

 

9. Sumitomo Mitsui Financial Group, Inc. (NYSE: SMFG)

三井住友フィナンシャルグループ。2010年11月に上場。

売上規模: $US 3.45 trillion(2022年3月期)
時価総額: $US 42 billion (2022年8月時点)

 

10. Takeda Pharmaceutical Company Limited (NYSE: TAK)

武田薬品工業。2018年12月に上場。

売上規模: $US 3.57 trillion(2022年3月期)
時価総額: $US 43.72 billion (2022年8月時点)

ニューヨーク証券取引所 (NYSE) の上場廃止企業の一例

ここからは上場廃止を行った日本企業を見ていきます。

ソニーに次いで、日本第二号として、1971年にニューヨーク証券取引所に上場した「パナソニック」等、日本では知らない人はほとんどいない有名企業が並びます。
直近であれば、2020年のLINEの上場廃止、2018年のNTTドコモ、京セラの上場廃止等があります。

2010年以降にニューヨーク証券取引所の上場廃止を行った企業は以下の通りとなります。

企業名 上場年月 上場廃止年月
日立製作所 1982年4月 2012年4月
パナソニック 1971年9月 2013年4月
クボタ 1976年11月 2013年7月
コナミホールディングス 2002年9月 2015年4月
アドバンテスト 2001年9月 2016年4月
日本電産 2001年9月 2016年5月
NTT 1994年9月 2017年4月
NTTドコモ 2002年3月 2018年4月
京セラ 1980年5月 2018年6月
LINE 2016年7月 2020年12月


東証の時価総額1位(2022年8月時点)のトヨタもNYSEに上場している

ニューヨーク証券取引所 (NYSE)のメリット

ここまで、ニューヨーク証券取引所の概要とナスダック上場の日本企業をご紹介しました。
ここからは日本の企業の目線でニューヨーク証券取引所上場のメリットをご紹介していきます。

ニューヨーク証券取引所上場のメリット #1 – 上場による企業レーティングの向上

NYSEは世界で最も有名であり規模も最大。上場規制が厳しい一方で、最も尊敬されている優良企業の上場取引市場です。
企業のレーティングもNYSEに上場していることで優良評価を得る場合もあり、各社の財務戦略上最も効果的な取引市場であるとも言えます。

ニューヨーク証券取引所上場のメリット #2 – ナスダック・OTCと比べて株価が安定しやすい

ナスダックやOTC市場と比べ、株式の取引手法が異なります。
NYSEは取引市場(フロアー)にてオークション方式、電子取引にて売買が成立。一方、NASDAQ/OTCはMarket Makerが株式を保有し、彼らを通して売買が成立します。

そのため、NYSE上場企業の取引は、出来高が高く、株価が安定している側面があります。

ニューヨーク証券取引所上場のメリット #3 – 異常事態時の売買安定化

完全な電子取引ではなく、人間(フォロアー)と決済システムとの融合であるため、IPOや異常事態時には株式の売買安定化がはかれます。

ニューヨーク証券取引所上場のメリット #4 – NYSEの企業ネットワークの活用

老舗の取引所であるが故に、(日本で大半の利益を稼いでいる企業向けには)米国への営業・財務的なメリットがあります。
様々なネットワークやイベントを通じた企業間同士の本業外利益の貢献があります。

ニューヨーク証券取引所 (NYSE) の上場と上場廃止要件

ニューヨーク証券取引所 (NYSE) 上場要件(2022年1月時の基準)

ここからはニューヨーク証券取引所の各市場の新規上場 (IPO)等、上場の要件を紹介していきます。NYSE関連市場として、NYSE (Main Board), NYSE American, NYSE Arcaの3つの市場が存在し、それぞれ上場要件が異なります。

本記事では特に、NYSE (Main Board)の上場要件に絞って紹介していきます。

NYSE (Main Board)には大きく、「アメリカ国内向け」と「アメリカ国外向け」の要件の2つが存在します。アメリカ国外の企業として認められる (foreign private issuer)要件として

  • 米国外の企業であり、政府団体ではないこと
  • アメリカの居住者が保有している、議決権付(直接的もしくは間接的)証券の割合が50%以下であること、もし50%を超える場合は
  • 執行役員・取締役の過半数がアメリカ市民・居住者であること
  • その資産の50%以上をアメリカ内で保有していること
  • 事業を主に米国で行っていること

 

上記の要件を満たすからといって、必ず米国外の企業の要件で上場する必要はなく、米国内企業の要件での上場も選択可能です。

それでは、国内・国外のそれぞれ流通要件 (Distribution Criteria)、財務要件 (Financial Criteria)要件をご紹介していきます。各上場要件の詳細はお問い合わせ頂くか、NYSEのWebサイトをご確認ください。

1. 流通要件 (Distribution)

1.1. 流通要件 (米国企業向け)
米国内の企業向けの流通基準 (Distribution Criteria)として、3つの基準が存在し、これら1〜3のうち、いずれかを満たす必要があります。(2022年1月時の基準)

項目 基準#1 基準#2 基準#3
浮動株数 1,100,000 1,100,000 1,100,000
株主数 100株以上保有する株主が400 2,200 500
毎月の取引数平均 100,000 株
(直近6ヶ月)
100,000 株
(直近6ヶ月)
1 million 株
(直近6ヶ月)
浮動株の時価総額 $100 million
(IPO, カーブアウト, スピンオフの場合は$40 million)
$100 million
(IPO, カーブアウト, スピンオフの場合は$40 million)
$100 million
(IPO, カーブアウト, スピンオフの場合は$40 million)
最低取引株価 $4 $4 $4

 

1.2. 流通要件 (米国外の企業向け)

米国外の企業向けの流通要件は以下の通りとなります。(2022年1月時の基準)

項目 基準
浮動株数 2,500,000
株主数 100株以上保有する株主が 5,000
浮動株の時価総額 $100 million
(NYSEに既に上場している親会社・関連会社がいる場合は$60 million)
証券の取引額 $4

 

2. 財務要件 (Financial)

次に財務要件 (Financial Criteria)を見ていきます。
流通要件と同様、米国内企業と米国外の企業で別に基準が設定されています。
(※米国外企業はいずれかを選択可能)

2.1. 財務要件 (米国企業向け) (2022年1月時の基準)
以下の「1. 利益基準」「2. 時価総額基準」のいずれかを満たす必要があります。

項目 1. 利益基準 2. 時価総額基準
過去3年の税引前利益の合計 $10 million
直前2年それぞれの税引前利益 $2 million
(※過去3年全てマイナスではないこと)
時価総額 $200 million

※もし、3年目の税引前利益がマイナスになった場合は以下の条件を満たす必要があります。

過去3年の税引前利益の合計 $12 million
直前の税引前利益 $5 million
直後の税引前利益 $2 million

 

2.2. 財務要件 (米国外の企業向け)(2022年1月時の基準)

米国外の企業向けの財務要件は大きく4つ用意されており、いずれかを満たす必要があります。

項目 基準1. 利益基準 基準2(a).評価・売上・キャッシュフロー基準 基準2(b) 評価・売上基準 基準3 関連会社基準
過去3年の税引前利益の合計 $100 million
直前2年それぞれの税引前利益 $25 million
キャッシュフロー $100 million
(直前2年のいずれのキャッシュフローも $25 million以上であること)
時価総額 $500 m $750 m $500 m
売上 $100 m
(直前の12ヶ月)
$75 m
(直前の会計年度)
事業継続 12ヶ月

 

ニューヨーク証券取引所 (NYSE) 上場廃止要件

(※2022年1月時の基準)

ここからはニューヨーク証券取引所の上場廃止要件をご紹介していきます。
主に流通要件と財務要件の2つがあり、以下、いずれかの要件に該当する場合でも、ニューヨーク証券取引所への上場が維持できず、上場廃止になります。

[流通要件 – Distribution Criteria]

  1. 株主の数が400未満になった場合
  2. 株主の数が1200未満、かつ直近12ヶ月の株の取引数の月平均が100,000株未満
  3. 浮動株が600,000未満

[財務要件 – Financial Criteria]

  1. 過去連続30取引日の時価総額平均が$50 million未満、かつ全ての株主資本の合計が$50 million未満。

※この他にも上場廃止要件は存在します。詳細はNYSEのWebサイトもしくは直接弊社にお問い合わせください。

ニューヨーク証券取引所 (NYSE) 上場のポイント

ポイント#1 – 5-10年後の上場目的を明確に

創業後間も無く(10年以内)創業者、投資家の株式売却趣旨の色が強い企業等、上場自体が目的の場合はNYSEへの上場は避ける事をおすすめします。

NYSEへの上場は上場後の方針とその趣旨が堅実な企業に最も向いており、5−10年後の上場目的があるべきです。

ポイント#2 – 米国を中心にした世界のIR戦略の策定

NYSEへの上場趣旨を5年以上の米国事業戦略に照らし合わせて検討する事が重要です。
米国拠点に経営幹部機能を保持し、IR・世界のIR戦略HQを作る事が重要です。

まとめ

本記事では、NYSE上場についてご紹介しました。

NYSEに限らず、米国市場の上場成功の鍵は上場後を見据えた戦略の策定です。NYSE上場についてご不明な点がある場合は、ぜひお問い合わせください。